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働き方改革で残業カット、収入月7万減…デザイナー「給料削減ではないか」と訴え
2020年06月13日 08時50分

「働き方改革」により、残業代がカットになった人はいませんか。

弁護士ドットコムニュースのLINEにも、残業が禁止となり月の総支給額は7万円ほど減ったという男性から情報提供がありました。「実質、給料削減としか感じられないのです。企業側になぜ都合の良いふうに使われるのか。泣き寝入りです」と疑問に感じているようです。

「働き方改革」により、残業代がカットになった人はいませんか。

弁護士ドットコムニュースのLINEにも、残業が禁止となり月の総支給額は7万円ほど減ったという男性から情報提供がありました。「実質、給料削減としか感じられないのです。企業側になぜ都合の良いふうに使われるのか。泣き寝入りです」と疑問に感じているようです。

●経費削減で残業禁止に

情報を寄せたのは、都内在住の40代男性です。デザイナーの仕事をしており、以前は裁量労働制で月24時間分のみなし残業代が支払われていました。

男性の会社でも、2019年から「働き方改革」が進められ、実働時間に対して賃金が支払われるようになりました。移行期間として、定時を超えた分の残業代に加えて月20時間分のみなし残業代も出たと言います。

しかし、2020年3月、会社側は経費削減のため残業を禁止。「残業したら、ボーナス査定を下げる」とも言われました。これにより、月の総支給額は7万円ほど減ったといいます。

男性は「当初は残業代を払うと言いつつ、残業禁止にするという矛盾。さらに、残業すればボーナス査定がマイナスになる。これってなんなのって思います」と実質的な給料カットに嘆いています。

「働き方改革」という名目での賃下げは、法的に問題ないのでしょうか。江上裕之弁護士に聞きました。

●賃下げが許されるのは4つの場合

ーー賃下げはどのような場合に許されるのでしょうか。

賃下げが許されうるのは、次の4つの場合に限られます。

(1)労働者との個別の同意がある場合 (2)就業規則の不利益変更を行った場合(不利益変更が有効である場合) (3)新たな労働協約の締結による不利益変更を行った場合(不利益変更が有効である場合) (4)労働契約や就業規則で使用者に委ねられている労働条件変更権限を行使した場合

個々の労働者と使用者の合意が「労働契約」、使用者がすべての労働者に統一的に適用されることを前提に作成した労働条件、職場規律などのルールが「就業規則」(賃金規程や退職金規程なども含みます)、労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する書面による取り決めが「労働協約」です。

法令、労働協約、就業規則の関係 法令、労働協約、就業規則の関係

まず、「労働契約」で定めた労働条件は、労使の合意なしに変更されないというのが大原則です。そのため、原則として労働者との個別同意がなければ賃下げを行うことは出来ません。

ただし、実際の労働条件は「就業規則」や「労働協約」により定められている事も多く、この場合には、「就業規則」や「労働協約」を変更することにより、労働者の個別同意がなくとも賃下げが許容される場合があります。

また、「就業規則」などで使用者に労働条件の決定・変更権限が委ねられている場合(降格に伴う減給や、個別査定に伴う減給など)にも、賃下げが許容される場合があります。

これらの場合以外でも、使用者が一方的に賃下げを行うことはありえますが、そのような賃下げは無効です。

●賃下げのハードルは非常に高い

ーーどの程度の賃下げなら許されるのですか。

賃下げが許容される程度について、一義的な決まりはありません。

実務上は、就業規則の不利益変更の有効性が争われる例が多いのですが、全従業員に対する賃下げについては、経営危機下で一定の範囲内でなされたものに限り許容されるのが通例となっています。

近時の裁判例でも、たとえ倒産回避のための減額であっても20%以上の減額は違法と判断されており、賃下げのハードルは非常に高いと考えるべきです。

賃下げをはじめとする労働条件の不利益変更が法的に許容されるか否かの判断は非常に難しいため、使用者の方は弁護士と相談しながら検討をすすめることを強くおすすめします。

労働者の方も賃下げを通告された場合には受け入れざるを得ないものなのか弁護士に相談されることをおすすめします。

●就業規則の不利益変更の可否が問題になりうる

ーー相談を寄せた男性は、2020年3月時点でみなし残業代が廃止された上、実際に残業もなくなっているため、月給が7万円も減ったそうです。

おそらく、就業規則の変更によりみなし残業代が廃止されたと考えられるため、就業規則の不利益変更の可否が問題になりうる事案かと思います

給与明細、雇用契約書、就業規則、賃金規定等を準備した上で、就業規則の不利益変更による賃下げを受け入れざるを得ないのかについて早急に弁護士に相談されることをおすすめします。

相談者に限らず、働き方改革の影響で残業規制が強化された結果、社内での残業は禁止されたものの従前と担当業務量が変わらないため自宅でのサービス残業を強いられているという方や、残業が事前承認性となり事前承認のない残業には残業代が支払われなくなったという方も相当数いらっしゃいます。

働き方改革等の影響で賃下げされてしまったという方は、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

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