この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
依頼者は、赤信号で自車を停車していたところ、後方から来た車に追突されました。依頼者は事故により、腰椎捻挫等の怪我を負いました。当事務所に相談にいらっしゃったのは、事故から3日後のことでした。
解決への流れ
事故から約8ヶ月間、治療を継続しましたが、足のしびれは完治しなかったため、後遺障害の申請を行いました。その結果、足のしびれは、「局部に神経症状を残すもの」として、後遺障害等級14級9号の後遺障害に認定されました。認定された後遺障害を前提に損害額を計算し、保険会社と人身損害の交渉を行いました。争点は、損害項目の中の逸失利益における基礎となる収入でした。依頼者は会社役員であり、役員報酬を受給していましたが、会社の従業員は依頼者の家族しかおらず、役員も依頼者一人でした。また、会社においては依頼者の役割が大きく、受給している役員報酬額も依頼者が行っている業務の内容からは相応の金額でした。以上の事情を説明した上で、役員報酬全額は労務提供の対価分に相当するため、逸失利益における基礎収入は役員報酬全額で算定すべきと主張しました。その結果、逸失利益の基礎収入は役員報酬全額で算定することで合意し、他の損害項目も裁判基準に近い金額で合意ができたため、示談が成立しました。
一般的に、役員報酬には、労務提供の対価部分の他に利益配当の部分も存在すると言われています。そして、逸失利益の算定における基礎収入は、労務提供の対価部分のみであり、利益配当に相当する部分は含まれないとするのが実務の考えです。他方、会社の規模、従業員や役員の構成、会社内における当該役員の役割等を踏まえれば、役員報酬全額が労務提供の対価と言えるようなケースもあります。役員報酬全額が労務提供の対価と主張する場合には、上記の事情を一つ一つ丁寧に主張・立証する必要があります。