この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
システム会社にヘッドハンティングをされ、前職よりも高い年俸で部長職として採用された。仕事は忙しかったが、ミスもなく順調であったが、あるとき社長から、勤怠管理について1ヶ月分をまとめて記載していることを指摘され、給与の過剰請求だと一方的に詰問され、役職を外されたばかりか、給与も2割以上減給された。社長は、このほかにも特定の女性社員と仲良くしていると邪推し、ことあるごとに仕事のやり方に難癖をつけ、仕事も与えないようになった。最終的に前職の給与を下回ったため、生活ができないとして自主退職を余儀なくされた。
解決への流れ
受任後、会社を相手に、違法不当な降格、減給等を理由に退職を余儀なくされたとして逸失利益、慰謝料等を求める内容証明郵便を送った。しかし、会社は全面的に争う姿勢。話し合いも難しい状況のためやむなく提訴。裁判では降格、減給の相当性、退職との因果関係、損害額などが争点となったが、入社から退職に至るまでの経過、降格・減給の原因となった事実について詳細に主張、立証した結果、第1審では、ほぼ請求どおりの損害賠償請求が認められた。会社は控訴したが、第1審の勝訴判決の結果を踏まえた内容で和解した。
違法不当な解雇や退職勧奨があったケースと比べて、降格や減給により会社にいられなくなって自主的に退職したようなケースでは、違法不当な降格、減給処分の立証のほか、これらと退職との因果関係、退職に伴う損害の立証が必要となるため、事件としては比較的難しい部類に属します。今回のケースでは、退職後すぐに弁護士が介入して会社に対して損害賠償の請求をしたこと、降格・減給の処分が短期間に連続して、また程度も大きいものであったこと、当該会社に入社した理由の一つに給与の高さが比較的大きなウェートを占めていたことなどの事情があったため、これらの事実関係を丁寧に主張立証することで、こちらに有利な判断がくだされました。一見困難に見える請求でも、前提となる事実関係を丁寧に主張して、ひとつひとつ立証していけば、有利な判断を得られるという典型的な事件でした。紛争の相手が徹底的に争う可能性のある事件は、裁判を起こしても判決になる可能性が高いです。そのため、弁護士が相談者から丁寧に事実関係と証拠を聴きとって、勝敗の確かな見通しを立てて臨む必要があります。