この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
A子さんとその元夫B氏との離婚調停に際し、B氏が、二人の子が20歳になるまでの養育費(一人当たり5万円)の支払いを約束しました。しかしながら、B氏は、調停成立後、養育費を1回分支払っただけでその支払いをしなくなり、A子さんからの連絡にも一切応じなくなりました。そこで、B氏に対する養育費の請求と回収に関してA子さんから相談を受けることとなりました。
解決への流れ
まず、A子さんの代理人としてB氏に対して未払い分の養育費の支払いと調停条項の遵守を求めて内容証明郵便を送付しましたが、それでもB氏は支払いをしてきませんでした。そこで、直ちに、調停調書を債務名義とし、未払い分の養育費と併せて二人の子が20歳に到達するまでの将来分の養育費も請求債権としてB氏の給料債権を差し押さえました。その後、B氏に代理人弁護士が就いて代理人間で交渉したところ、二人の子の将来分(20歳まで)の養育費相当額(約400万円)を一括で支払うとの申し出があり、その金員の支払いを受けて給料差押えを取り下げました。
法律では、養育費の未払いによる給料の差押えについては、給料(税金等を控除した残額)の2分の1まで(養育費以外の場合であれば4分の1まで)が差押えの対象になります。また、支払期限が到来した未払いの養育費と併せて、支払期限の到来していない将来分の養育費についても、請求債権として一括して差押えをすることが認められています。このように、養育費の未払いによる給料の差押えについては、法律で手厚い保護が与えられています。したがって、養育費の支払義務者が公務員やサラリーマンでしっかりした勤務先に勤めているときは、その給料の差押えは非常に効果的な手段となります。逆に、養育費を支払う側からすれば、養育費の未払いによって将来分の養育費も含めて給料が差し押えられると、仮にそれまでに支払期限の到来している未払い分を一括して支払ったとしても、元配偶者に差押えを取り下げてもらうか、その勤務先を辞めない限り、将来に渡って給料の差押えが続くことになります。このような事態は、勤務先との関係でも格好悪いものですので、くれぐれもそのような事態にならないよう注意が必要です。