この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
被相続人は、生前、自営業を営んでいる亡き妻の実家(本家)に、経済援助をする目的で2500万円を貸付けることになった。しかし、本家の顧問税理士から、被相続人が80代と高齢であることから、返済期間を20年とする長期金銭消費貸借を締結することは不自然であるから、行為計算否認(法人税法132条)に該当する可能性があるので、一旦、娘である依頼者に生前贈与したことにして、依頼者から本家に貸付を行えばよいとアドバイスを受けた。そこで、被相続人は、顧問税理士の指示に従い、依頼人と贈与契約書を作成し、依頼人の口座に金2500万円を振り込み、同日中に、同口座から本家の口座に振り込みました。また、本家の不動産(建物は二束三文)に、依頼人を被担保債権者とする抵当権も設定しました。1,2年で本家からの返済も滞り、その数年後に、被相続人も死亡しました。依頼人は、本家が銀行からの融資を拒絶されたために、被相続人から金銭を借り入れた経緯を知っていたので、本家からは、ほとんど金銭を回収できないと考えていました。しかし、被相続人には、認知した子(相手方)がいました。相手方は、上記2500万円が特別受益に該当すると主張してきました。上記2500万円についての認識の違いから、当事者間では協議ができなくなり、依頼人は、弁護士に依頼をしました。
解決への流れ
数年間にわたり、交渉、遺産分割調停を行った結果、特別受益の金額を1250万円まで減額することができました。また、本家に対しても粘り強く交渉を続け、約700万円の金銭を回収することができました。
依頼者にとって、大変不幸な出来事でした。依頼者名義で本家に貸し付けるに至った経緯から、「生計の資本」としての贈与ではないと主張しましたが、家庭裁判所は認めてくれませんでした。そのため、上記2500万円を如何に減額するかに大変苦心しましたが、時間をかけて交渉した結果、半額程度に押させることができました。仮に、被相続人が、生前に、私のところに相談に来ていれば、持ち戻し免除の意思表示等、依頼者に経済的負担をかけずに済む案を提案することができた事案でした。