この事例の依頼主
50代 女性
相談前の状況
婚姻生活20数年で、突然、夫から離婚を切り出され、自宅を出ざるを得なかった専業主婦の奥さんからのご相談でした。未成熟子はいませんでした。別居後、婚姻費用はもらっていました。奥さんは離婚を希望するものではないが、夫はいいだしたらきかない性格なので、従わざるを得ないと考えていました。しかし、離婚について決断のつかないまま夫から一定の解決金を渡すという条件の説明を受けているうちに、夫のいっていることは正しいのかと不安が募り、弁護士相談となりました。
解決への流れ
交渉段階から弁護士受任となりました。離婚に応じる義務はないことをご説明しました。交渉では妻が望んで離婚をするものではないという当方のスタンスを明確にしたうえで、夫に対して離婚条件の提案を求めるとともに、同人名義の資産の開示を求めました。時間はかかりましたが夫も開示に応じ、内容は奥さんにもある程度信用できるものでした。財産分与の対象・基準額等の判断材料となる資料も整い、奥さんが妥当な財産分与の額について判断できるようになった結果、一定の解決金の支払を条件に離婚に応じても良いという決断に至りました。当初、夫は自宅が財産分与の対象となるとは考えていなかったようですが、法律相談の利用を勧め、理解を得ることができました。自宅は、住宅ローンの支払い継続中でしたが、評価額も上がっており、相当額の担保余剰が見込める物件でした。査定書の評価額と別居時点での残ローン額および退職金計算書にもとづき算出される財産分与額を前提に、奥さんが希望額を考え相手方に呈示し、合意に至りました。また、当事者間では協議されていなかった年金分割にも応じてもらいました。合意内容は公正証書化いたしました。
夫から要求されたからといって離婚に応じる法的義務はないということを理解して頂くことからスタートしました。当事者同士の交渉ですと、声の大きい方に他方は圧倒されてしまい、自分の正当な権利を主張したり、冷静な判断ができなくなることもあります。また、財産分与について対象・基準額の特定のため、まず相手方名義の資産の開示を求めることによって、奥さんの判断に必要な情報を得ることができ、それが納得のいく解決に繋がったものです。奥さん側にもある程度満足して頂ける結果だったと思います。